華鈴は理子に憧れていた。

理子は、「入学式の日に華鈴が声をかけてくれなかったら、私は学園生活を送れていない」なんて言っているけど。

本当はあの日、理子に近づきたかったのは華鈴の方なのだ。

勉強も出来て、陸上部でもエース級の活躍をして、可愛くて、ショートカットが似合ってて。

華鈴から見れば、理子は何もかも兼ね備えたアイドルみたいな存在だった。

そんな女の子に華鈴もなりたかった。

だから近づきたい一心で、華鈴は一人でいた理子に声をかけたのだ。

自分には何もない。

理子みたいに二物も三物も持っていない。

そんな自分が万能な理子に近づくには、ピエロみたいにおどけるしかないと思った。

いつも明るくて誰とでも打ち解ける人懐っこい華鈴の素顔は、コンプレックスの塊みたいな内向的な少女だった。