「美雨?」



佐原が帰った後、隣の部屋に入った。


真っ暗な部屋の中、美雨は隅っこで膝を抱え座っていた。



「美雨、ゴメンな……」



俺がそう言うと、美雨は首を左右に振った。


俺と佐原の会話は美雨にも聞こえてたはず。


半分血の繋がった妹の言葉を美雨は、どんな気持ちで聞いてたんだろう……。


余所者扱いされ、血の繋がった父親からも見放され、美雨は今までどんな気持ちで生きて来たんだろう……。


美雨の気持ちを考えると、怒りよりも悲しみや苦しみが込み上げてくる。


美雨が何も話さず無表情で、感情のない人形みたいになったのは、佐原が言ったことが原因なのか?


その時、駅で会った彼女の顔が浮かんだ。


確か美雨がいた施設の職員だと佐原は言っていた。


彼女に会えば、真実がわかるかもしれない……。