「参った」

 ブンガクは、愛嬌のある小さな黄色い目に右上腕の手をあてて、天井を仰いだ。

「こんなにあっさり最終防衛ラインに到達されるとはなぁ・・・これが大手傭兵会社の実力なのかね」

「ログを見る限りだと、新システムの能力が高いって感じね」

 チャオクーンは艦隊の戦闘ログを眺めながら言った。

「これはどうも排時リンクで情報共有をしてやがるな。この情報の量と精度からしてやはり専用艦がいるのは間違いなさそうだ」

「そうね。クーロンと同等クラスの情報処理艦ね」

「まあ、だいたいの見当はついてる」

「あらそうなの?」

「しかも、こいつはかなり強力な情報空間の盾だ。一応、影から手を回して軽く試してみたけど、システムの外殻しか触れなかった」

「さっきの駆逐艦使った海賊戦法でしょ」

「その通り。よく判ったな」

「だってあなたが好きそうな手だもの」

「良くお解りで」

「付き合い長いですからね」

 チャオクーンは向かいの情報端末に座るブンガクを特徴的な赤い猫目で見詰めた。

「よし、いい感じな戦況だ」

「楽しそうね」

「そりゃあ、勿論。ここらで介入してあげますか」

「情報空間の盾と矛の対決って訳ね」

「そんなとこかね。それじゃあ、バックアップ頼むよ」

「了解」

 ブンガクは左耳裏の埋め込みに刺さっている情報伝導チューブを確認すると、本格的に情報空間へ意識をシフトした。