今日でサラリーマン勤めが終わった。
その夜、営業二課の有志で僕の送別会を行ってくれた。
「高井君、残念だよ。わが社のホープだったのに」
課長が肩を叩く。
「高井さん、ずるいっすよ。俺たちにノウハウを伝授してくれる前に辞めちまうなんて」
大学の部の後輩で、僕を追って就職してきた沼田が嘆く。
「結婚式には呼んで下さいよぉ」
恨めしそう顔で沼田の同期の清水が付け加えた。
「しかし勇気ありますねぇ。結婚決めてから転職なんて。それも個人輸入の手伝いなんて・・・いくら里美さんの兄さんでも」
沼田が割り箸でつまみをつつきながら、僕の顔を凝視した。
同期の奴らは声高に、ライバルが一人減ったとはしゃいだ。
体育会系でまとまっているこの課は、妬みや嫉み等は、皆無といっていいほどで、僕はずっと居心地が良かった。
会社でもプライベートでも、僕は本当にラッキーだと実感していた。
が、ほんのちょっぴり寂しさがこみあげてきた。
(いや、何を言ってるんだ雅也・・・あとにはひけないぞ)