「七年、か……」

缶ビールのプルタブを開けると、プシュ、という小気味いい音が耳に届く。

あたしは父のソファに横たわりながら、一人で『七回忌』の続きを行っていた。

故人を偲ぶ、なんて言葉では簡単に言うけれど、あたしには偲ぶということがどういうことか良く分からなかった。

やっぱりシャオファと一緒にやればよかったなぁ、なんて思いながら、あたしは缶ビールに口をつける。

ほろ苦い炭酸が喉を通りすぎ、眩暈にも似た爽快感が身体に伝わった。

父との思い出を味に例えるとしたら、もしかしたらこんな苦さなのかもしれない。


「あ……」

ふと目にした父の机、その上に置かれた古びたPCの電源が、ONになっていることに気づく。

そう言えば、昨夜の仕事の前に自分で本棚から引っ張り出して、電源を入れたままだった。

閉じられたノートパソコンの蓋を持ち上げると、打ちかけのパスワード画面が明るく光る。


I O R


あと一文字、Iを入力すればログイン出来る筈だ。

人差し指でIのキーをパチンと弾くと、昔見たデスクトップの画面が今も変わらずに現れる。

青い壁紙に、いくつかのアイコンが並ぶだけの、質素な画面。