ロンシャンタウンとは対照的に、奇麗に区画整理が進む一画。

高い洒落たビルが建ち並ぶ中心に、まるでタワーのような全面ガラス張りのビルが存在している。


そのビルこそ、この国でNPAと呼ばれる、国家警察機関の建物である。


長年の混乱を徐々に鎮静化へ向けて尽力したのは、当時このNPAの総監であった男だった。

新しい国の基盤が未だ整わないこの国の実権を握っているのは、NPA総監だと言っても過言ではない。


近頃引退した前総監の代わりにその地位へ就任したのは、洪泰平(ホンタイフォ)という男。

前総監の、息子である男だった。


高いビルの最上階にある総監執務室で、ホンは眼下に広がる街並みを眺めていた。

紺色の制服の胸元には、総監の階級を表す勲章が光っており、彼の年輪の刻まれた表情からも、その威厳が見て取れる。

ホンは淹れられたばかりのコーヒーを口へ運びながら、遠くに見えるロンシャンの壁に視線を移した。


「街の様子はどうだ」

上品な陶器のコーヒーカップを傍らのガラステーブルへ置きながら、ホンは背後の男に静かにそう尋ねる。