「石倉くん」 彼女が俺を呼ぶ。 「なに」 「なんでもない」 彼女は前より生意気になった。 「じゃあ呼ぶなよ…」 「あはは、怒らないでよ」 彼女が目を覚ますまで一週間かかった。 本来なら彼女は死ぬはずだったんだから、それでも奇跡だった。 「早く歩かないでよ」 松葉杖をつきながら彼女は俺を追いかける。