生まれつき病弱だった僕は毎日を病室で過ごしていた。
学校になんてあまり行ったことがないから友達なんて呼べる人は誰もいない。

(今日も、いる)

最近の日課は窓から見える中庭を眺めること。

そこにいつも"彼"はいる。
名前も何も知らない彼。
2週間ほど前から毎日、中庭で本を読んでいる。
右足にギプスをはめているから骨折でもしたのだろう。


今日もいつものように窓から中庭にいる彼を見ていた。
もう少ししたら彼は中に入ってしまうのだろう。
そう思っていたら、ふと彼が上を向いて

目があった



こんなことは初めてだった。
だから、どうしたらいいかわからなかった。
あたふたしていたら、いつの間にか中庭から彼の姿はなくなっていた。

(あ、行っちゃった)