気がつくと見知らぬ天井があった。どこかで見たような記憶もあるが、どこで見たのだろう。鈍い体の痛みとともに激しい頭痛に襲われた。

「ここはどこだ?」

 最初に抱いた疑問だった。それはまるで見慣れた光景にも見えたが、なぜそう思ったのかが思い出せない。痛みが激しく体を動かせそうにもない。

「無理しないでください」

 声をする方を見ると、白衣に身を包んだ女性がいた。確か…思い出そうとする頭が痛む。

「あなたは海で発見されたんですよ」

「海で?」

「ずぶ濡れで意識がないのを通りかかった私が助けたんですよ」

 そう言うとこちらに笑顔を見せた。どこかで見たことはあるのだが、肝心な部分を思い出そうとすると頭が痛み出す。彼女の笑顔は素敵なものに見えたが、なぜか気味の悪いものにも見えた。

「今は無理しないでください」

 そう言うと、奥の部屋に引っ込んで行ってしまった。何が何だかわからない。ただ何かとても恐ろしい目に遭った気がする。そして奇妙な感覚が拭えずにいた。なぜならここを知っているような気がするからだ。右腕が痛む、見ると包帯を巻かれている。

 一体自分の身に何が起きたのだろうか、答えのでない問いが頭を巡る、それでも少しずつやって来る睡魔に負けて、深い眠りについた。
 奇妙な夢を見た。それは親しい誰かなのだが、その誰かが僕の大事な人を殺してしまう夢だった。