ソファから立ち上がり、彼女の膝に触れそうなほど、すぐそばへ寄る。

ここまで近づいたことは今までなかったかもしれない。

いつも、彼女とは一定の距離を保っているから。

そうしないと自分を抑えられない……。



目線の高さにまで屈み込み、そっと目を合わせる。

間近で見る彼女の肌は、きめ細かくなめらかだった。


フォークを持つ彼女の手を覆うようにつかみ、自分の口元へ引き寄せた。


彼女に触れたのは、きっとこれが初めて。


半分にカットされた苺を口に含むと、甘酸っぱさが口の中に広がった。

手を離したあと彼女と視線を合わせれば、なぜか急いで視線をそらされた。


「ご……ご馳走さま」


フォークを皿に置き、慌てたようにソファから立ち上がるので、自分もつられて立ち上がった――そのとき。

立ちくらみでふらついたのか、紗矢花がちょうど自分の胸元へ倒れ込んでくる。