「お客様、ブルームーンでございます」 バーテンダーが、上品な所作でカクテルを差し出す。 「ありがとう」 常連客の美しい女性は言い、カクテルを手に取る。 女性はカクテルを一口飲み、にこやかに微笑む。 口に出して言わなくとも、感想は明白。 綺麗だ。 こんな時間が、 誰にも邪魔されずに続いてほしい。 そう、邪魔者は、いらなかった。 そこに――、ドアの開く音が響いた。