――……。


麻実ちゃんなら何か良いバイト知ってるかな?
と、翌日の学校で聞いてみた。


「私、夏は毎年親戚がやってる海の家で働くんだけど…美和も一緒にする?」

「え、いいの?麻実ちゃんが一緒なら心強いよー」

「じゃあ、私から話しとくね」


…あっという間にバイト決まっちゃった。
冬馬兄ちゃんのおまじないのおかげ、かな?

そんなことを考えていると、つい口元が緩んでしまう。
それを見た麻実ちゃんがニヤリと笑う。


「まーた冬馬さんのこと考えてるでしょ?」

「え、あ…」


…麻実ちゃんって、鋭い。
まぁ、私が顔に出やすい人間だってこともあるけど。


「バイト代で冬馬さんへの誕生日プレゼント買うの?」

「うん。今年は腕時計にしようと思って」


去年は麻実ちゃんに相談して、名刺入れをプレゼントした。

…去年のプレゼントは、家族で贈った腕時計を除いたら今までで一番マトモだったかも。
いつもは本当に簡単な物で、フェイスタオルとかボールペン3本セットとか駄菓子の詰め合わせとか。

「ただの幼なじみ」だから…あんまり気持ちを込めすぎて贈ってもな…ってどこかで思ってた。

でも今年は、時計を贈ろうって決めたんだ。
ただの幼なじみ以上にはなれないってわかっていても…。


「…あのね、冬馬兄ちゃんに“幼なじみとして以上に好きだ”って言われたの。
でも同時に、“付き合うとかそういうのは出来ない”って言われた」


麻実ちゃんには話そう。
そう思って笑ってみせる。


「好きって思ってくれてるだけ良かった…よ、ね。
それ以上が無くても、冬馬兄ちゃんとはこれから先も幼なじみで居られるわけだし」


それだけで満足だ。自分にそう言い聞かせる。



「やっぱり俺とやり直す?」



突然のセリフ。
良明くんが優しい顔で笑ってる。