公園について15分くらい後に、黒崎君はやって来た。

ゼェー、ゼェー、とかなり息を荒くしていた。聞いたら、黒崎君はなんと自宅から駅に向かい、そこから猛ダッシュしてきたらしい。

私はそれを聞いて少し笑ってしまった。

「でも、何でわざわざここを選んだの?距離あったんじゃない?」

黒崎君は乱れた息を整えて、

「俺が…鈴木を、好きになった場所、だから……」

それを聞いて私は固まった。

「俺、高校の頃は今と違うとこに住んでたんだ。だから、通学のときはこの道を通ってて。いつだか、学校に行くのが面倒になってここでサボってたんだ。その時に鈴木を見つけて、まぁ、いわば一目惚れだよ…」

確かに、私は高校生活の中でたった一回だけ、遅刻をしたときがあった。あの時は遅刻したことのパニックであまり記憶になかった。

「だから、ここで鈴木の気持ちが聞きたい」

黒崎君は真っ直ぐな眼差しで私を見つめる。

静かに深呼吸をする。また、さっきの緊張が甦ってきた。

私は黒崎君を見つめて、

「好き」

周りの音が無くなった。

「黒崎君が好き。家族想いのところも、優しいところも、変に可笑しいところも、真面目なところも全部含めて黒崎君が好き」

言えた、そんな達成感で満たされていた。

ハァー、と軽く深呼吸していると黒崎君が私の腕を掴んで、気づいたら黒崎君の腕の中だった。

さっきより一層力を強くして抱きしめる。少し苦しかったけど、私も静かに黒崎君の体に腕を回した。