まだ、信じられない。
『こんなに好きなのに、手遅れじゃない…!!バカ…っ』
あの言葉が、夢だったんじゃないかとさえ思えてくる。
だけど、この手で抱き締めた璃依の体温がまだ残っていて
夢ではないと教えてくれる。
「何、心配してんだよ。情けねぇ…」
誰もいない屋上で、一人呟く。
優しく頬を撫でる風が涼しくて、心地いい。
顔の火照りが、どんどん引いていくようだった。
「バカみてぇ…。女の笑顔見ただけで赤面しちまうなんて。ホント、情けねぇな。」
今も、目に焼き付いてる。
あいつから、初めて俺に向けられた笑顔。
いつも、怒った顔ばっかだったからな…。