――今日は、猫の目の月の夜だ。


 いつもより、遅くなってしまった帰り道。メールを打ちながら、早足で暗いバス停を後にする。
 今日も寒いなぁ…。
 吐く息が白い。

「わぁっ」

 誰かにぶつかってしまった。

「イテェ…」

 若い男の人みたいだ。
 でも、痛い程はぶつかってないと思うんだけどな…。
 あ。よく見ると、知ってる顔だ。

「オオカミ……くん?」

「んぁ? あぁクロネコ? 何、お前ん家、この辺なの?」

「え、うん…」

 同じ大学のオオカミくんは、体が大きくて、態度も大きい。正直、ちょっと怖くて苦手な人だ。

「帰るの遅いのな。チビッコは早く帰らないと危ねぇぞ」

 そう言って、頭をガシガシ撫でられた。


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