「由衣ーっ」
下でお父さんが呼んでいる。
それでも私は、薄暗い部屋のベッドに伏せたまま、返事も出来なかった。
さっきから、セーターの袖口で何度も唇をぬぐっている。
「由衣ー?」
呼びかけてくるお父さんの声が訝るように曇ってきた。
おそるおそる部屋を出て、階下の様子をうかがった。
ちょうど、ダークスーツの後ろ姿が、リビングを出て玄関へ向かう所だった。
「由衣ー。先生、帰られるぞー。降りて来てお見送りしなさーい」
また、大きな声で呼ばれ、ドキッとした。
「かまいません。由衣さん、『これから勉強する』と言ってましたから」
すかさず先生が言う。
「そうですかぁ?」
お父さんが申し訳なさそうに言っている。
聞いていられなくなって、私は部屋に戻った。
―――先生に裏切られた。
怖かった……。
嫌い……。
嫌い……。
大嫌い……。
私はベッドに伏せて泣いた。
下でお父さんが呼んでいる。
それでも私は、薄暗い部屋のベッドに伏せたまま、返事も出来なかった。
さっきから、セーターの袖口で何度も唇をぬぐっている。
「由衣ー?」
呼びかけてくるお父さんの声が訝るように曇ってきた。
おそるおそる部屋を出て、階下の様子をうかがった。
ちょうど、ダークスーツの後ろ姿が、リビングを出て玄関へ向かう所だった。
「由衣ー。先生、帰られるぞー。降りて来てお見送りしなさーい」
また、大きな声で呼ばれ、ドキッとした。
「かまいません。由衣さん、『これから勉強する』と言ってましたから」
すかさず先生が言う。
「そうですかぁ?」
お父さんが申し訳なさそうに言っている。
聞いていられなくなって、私は部屋に戻った。
―――先生に裏切られた。
怖かった……。
嫌い……。
嫌い……。
大嫌い……。
私はベッドに伏せて泣いた。