「じゃあね、和泉。残りの学校生活楽しんでね」

退院したのは10月に入ってからだった。
二週間の入院生活だった。

母さんに学校まで送られて、俺は校門をくぐった。

「…そこにいるのは、左京?」
「和~泉~!」

一番最初に出迎えてくれたのは左京だった。
「も~さみしかってんで?なにしとったん!」
「わり、風邪こじらせた」

「やっだぁ!和泉のひ・よ・わぁ!」

抱きついてくる左京を引き剥がしながら、階段を上る。

「…治ってよかったわ」

…なんでお前、そんな悲しそうな目してんだよ。

なんでそんな目で俺をみる…?

「っわ!」

次に抱きついてきたのは涙花だった。

「…おかえり、和泉。左京君、これ」

ヘラッと笑って涙花は左京にノートを渡す。

ムカつく…

何だよ、俺をみた時の顔。
同情と恐怖であふれた顔。
¨イツモ元気ダッタノニ、モウ遊ベナイナンテ¨


そんな涙花の心の声が聞こえそうだった。

「大丈夫なの?学校きて」

¨ナンデ来タノ?来ナクテイイノニ…¨

思いこみにすぎない。
でも俺は、ひどくおびえた。

「…うざ。話しかけてくんなよ」

涙花はグッと手を引いた。

傷ついた顔が、目にみなくてもわかる。

「…和泉、どないしたん?羽生やで?」

「…」