谷川に対する興味は今や恋心の域まで達していたが、それを認めるのも、それを押し隠して谷川の元に行くのも躊躇われた。

このまま、準備室での谷川に触れなければ忘れられるんじゃないかと思っていたのに当の谷川に呼び出されるはめになってしまった。

せんせは一体何を考えてるの…?

呼び出しをすっぽかそうかとも考えた美月だが、谷川が何のために自分を呼んだのかへの好奇心もあって結局準備室の前に立っている。


今日もコーヒーの香り…。

そっとドアを細く開いて中を覗くと谷川が窓際でプリズムを弄んでいた。

静かにドアを閉じて、1つ深呼吸をしてからノックして開けた。

「瀬尾です」

「入って」

谷川の声に緊張と胸の高鳴りで足が震えている。

ドアを閉めたのはいいが谷川の方を向けずそのままでいると向こうから近寄ってきた。

谷川が無言で部屋の鍵を閉めたのを見て思わず振り返る。

「せんせ…?」

今まで鍵を閉められた事がなかった美月は不安で泣きそうになった。