「夕方になると切なくなるね。」 美人で評判のユカは、仕事前のモスでそう行った。 (今から仕事なのに、、) ミナコはそう思った。「まぁ、そうだね。ところで、彼氏とはうまくいってるの」 最近、目をハートマークにして彼のことを話すユカをみていなかった。 「彼氏じゃないよ。あんなの。他に女もいるし。」 「うっそ。まぁ、もてそうだからね。」 当然だと思った。 ユカには言ってないが、「彼」が他の女の人と街を歩いている、という評判は幾度も耳にしていた。 「あ~ぁ、空からイケメン降ってこないかなぁ。浮気しないで、Hも尽くしてくれるイケメン!」 「いないよぉ、そんなの。」 ミナコはそう言いながら、心の中でほくそえんでいた。 大学で同じ学部のユカは、女子校時代からの同級生だ。 バレー部に入って、明るく活発だったミナコは、学校で友達も多かった。 一方、家が厳しく、田舎に住むユカはさほど友達が多いわけでもなく、美人だか目立たない存在だった。 ミナコは内心、親友のユカを見下していた。それはコンプレックスの裏返しだったのかもしれない。 一重で腫れぼったい目、ちょっと上向きの鼻、トリみたいなあご。 けれども、笑顔がかわいいって、パパは言ってくれるし、友達に不自由することはなかった。 「そろそろいこっか。」 ユカと自分のトレーを片付けながら、ミナコは言った。 「あっありがとう!ホントだ、もうこんな時間!」