「どうしたの?」

ひょこりと佐伯さんが僕の視界に入ってきた。
あんまり突然でかなり驚いた。

「…え?」
おまけに絶賛悩み中のおかげで対応し損ねてまぬけな顔にまぬけな返答。
授業はいつの間にか終わってたらしい。

「なんだか、ぼんやりしてたから大丈夫かなって…。逆に悪かったかな。ごめんね」

どうやら、意識飛ばしながら起立と礼をしてたらしい。
つか、心配かけた上に好きな子にこんな顔させるなんて男として失格だ。

「いや、考え事しててちょっと面食らっただけ。心配させちゃってごめんね」

にこりと笑ってみせると、彼女は「青くんも驚く事って有るのね」と可愛い笑顔で失礼な事を言ってくれた。

「最近ある事で頭がいっぱいでさ。もう、参っちゃうよ」

と机につっぷしてから、そのまま顔だけあげて佐伯さんを見上げる。
もちろん、君のことでなんて困らせる言葉は胸にしまっておく。

「私で良かったらいつでも話してね」
とまたまた可愛い顔で優しいことを言う。

「ありがとう」
上手く笑顔を作れたか不安だった。

授業の合間の短い出来事。隣の席だからだろうけど、心配までしてくれる。

それだけで、もう僕の胸はいっぱいだ。