「先輩、本当にあの御門って奴、参堂のピッチャーだったんですか？」
「んあ？ なんで？」
それは部活終了後の部室だった。
今まで黙っていた高瀬が、陽太が参堂のピッチャーだったことを信じられないといった表情で俺を見る。
陽太は本当に、参堂のピッチャーだ。
「だって平塚先輩がどれだけ投げさせようとしたって、今日一球も投げようとしないし。それになんで参堂からこんな有名でも何でもないとこにわざわざ」
高瀬の声がだんだんと小さくなっていくのを耳に入れながら、練習着の上着を脱ぐ。
「今日は投げたくなかった、とか投手にはいろいろあんだよ。アイツ、変にプライド高いし。あとここに呼んだのは俺、家庭の事情とかあったらしくて参堂辞めたらしいから」
いつもはざわついている部室も、今日だけは静かだ。
それだけ、陽太を気にしているんだろう。
