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バレンタインなんて、


どうでもいい。



制服のままリビングのソファーに横になる。







「………あ。雨。」




さっきまで天気良かったのに。




ポツポツと降り出した雨は少しずつ本降りになってきた。





「泉ー。チョコ何個もらったか勝負しよーよ!」



「やだよ。めんどくせぇ。」




大量のチョコを抱えた葵がリビングのテーブルの上にドサッと乗せた。




「なんだよ、やる気ねぇなあー。たくさんもらってきたんでしょ?」



そう言って勝手に俺のカバンやら紙袋やらを漁る。



確かに俺は今日大量のチョコを貰った。



正しくは貰ったというより、学校に行ったらすでに置いてあったのだ。



チョコに罪はないから持って帰ってきたものの…



こんなの、


嬉しくも何ともない。




欲しい人から貰えないんじゃ、いくらたくさん貰ったってそれは負けたことになる。





「あ、泉。ひまちゃんからは貰ったの?」




「……今俺の前でその名前出さないで。」





あの日以来俺はどうしたらいいのか結局分からなくて何も行動に移せずにいた。



もちろんこのままでいいわけないことは分かってる。




「なに、ケンカでもした?」




「ほっとけ。」




「芸能人との恋は大変ですなー…」




葵に背中を向けるように寝返りを打つ。



「……あ、泉。携帯鳴ってるよ?ひまちゃんじゃない?」



「え!?」



チョコに埋もれたケータイを引っ張り出す。



「もしもし!」




「もしもし……泉?」




「…ハル?」



電話の相手は神戸ではなく、ハル。