八戸の襲撃以降、病院内は静かだった。

時折外で、警官隊が拡声器を使って武装グループに語りかけては、興奮した犯人が怒声を浴びせ、空に向かって自動小銃を発砲しているのが聞こえる。

…恐らくは六道さんが武装グループの意識を病院の外に向けさせ、俺が行動しやすいようにしてくれているのだろう。

その心遣いは有り難い。

しかし…。

そのアイデアも、八戸にはおよそ通用していないに等しい。

八戸は、こちらの手の内を全て読み通している感さえある。

俺が交渉人(ネゴシエーター)のふりをして病院内に潜入した事も、六道さんが現在病院の外に意識を向けさせる為に警官隊に語りかけさせている事も、恐らく意図を知っているのだろう。