セフォードの街の中心部から少し離れた宿屋。


宿屋というより普通の二階建ての一軒家のような建物は、窓際にカラフルな花が飾られている。


クリーム色の可愛らしい建物とは反対に、外は手の施されてない雑草ばかりの花壇と錆びた鉄柵で区切ってあった。


その周りに民家や、剣や盾などの古びた店が点々としている。


少し離れた所には、涼やかな森が悠々と広がっている。


人の気配がほとんどない静寂な場所…。


その中、宿屋の窓から馴染まない服を着たれんげが顔を出した。


制服を脱ぎ捨て、この国の人々が着ている民族的なオレンジ色のワンピースを着た。


あまり目立つ格好をしていると、住民に不安を与えるとの理由だった。


帰ったときの為にも、必ず持っていろとフェイに言われ、渡されたバックの中へしまう。




きっちりと支度をしたが、別に元の国へ戻りたいという願いからではなかった。


ただ、このわけのわからない国よりは、“自分がいた場所”へ戻ることは考えていたが。



自由になったわけでもなく、たださっき出会った人たちについて行くしかない。