僕の世界から色が消えた日。

色だけじゃなく君は、僕の心まで奪って行くのか。



「…辞、めた?」

「そうなんだよね。急だったから、武田君に挨拶も出来なかったみたいだよ。」



嘘だ。

花屋の店長の言葉に、僕の世界は足元からガラガラと崩れ落ちていく。

上手く呼吸が出来ない。

僕はフラフラとカリンの鉢の前で歩みを止めて、それを見つめた。何か言いたそうな店長を知らない振りしながら。僕はただ、カリンの花を見つめていた。



「…どうして。」



淡く色付いてるであろう、カリンの花は。酷く悲しい色をしていた。