夏祭りが終わると、村の朝晩はめっきり涼しくなり、そろそろ僕が町へ戻る日がやって来ました。
 みんなとのお別れの朝、校庭のジャングルジムの上では村の友達がいつまでも大きく手を振ってくれました。
 僕もみんなに負けないように手を振り続けました。
 一番仲良しだったゲンちゃんは怒ったような顔で僕を睨んでいます。
 絶対にまた会えるよね。みんなで一緒に遊ぼうね。ずっと忘れないよ。
 気が付けば、いつの間にか僕の腕は見事なくらい日に焼けて、村のみんなと同じ色になっていました。
 そして、最初に来た道をおばあちゃんとバス停まで並んで歩きます。
「ぼう、来年もまたおばばの家へ遊びに来てんでの」
「うん、必ず来るよ」
「おばばは楽しみにしているさけな」
「うん、僕も楽しみにしているよ」
「ぼう、ありがとうの」
「今度はおばあちゃんが僕の家に遊びに来たらいいよ」
「ほうか、ほうか、ぼうはええ子や。ほんまにええ子や。ありがとう」
「ママもパパもおばあちゃんに会いたがっているよ」
「ほうか、ほうか、うれしいのお」
 来る時にはあれほど長く思えたのに、帰りの道のりは半分くらいの短さに感じました。
 別れ際に僕の頭を撫でてくれたおばあちゃんの手は驚くほど細く、小さく、シワくちゃでした。