「クシャおじさんの
サイン本、百円引き!」

帰りの電車で読む本を買おうと、駅ビルの書店に立ち寄った。

特に、目当ての本があるわけではないので、入口に近い、平積みのコーナーをなんとなく眺めていた。

直木賞作家の新書が積まれた隣に、そのクシャおじさんのサイン本があった。


クシャおじさん…

昭和のテレビ番組で、手を使わず、顔面をクシャッと三分の一くらいの高さに縮めていたおじさん…だった気がする。

トークはおろか、声さえ聞いたことはない。

ともかく、顔を縮める『だけ』のおじさん。

(それだけの人なのに、俺もよく覚えていたものだ)

そんなクシャおじさんが、本を出していたとは。