20年前の社員が、いまでもいるだろうか?

それはないな、と北野森は首を振った。

人を殺しておいて、同じ町にいるとは思えない。
もっと人の出入りの激しい街へ逃げるだろう。
名前もわからないのに、犯人を探すことなんて無理だ。

自宅に戻っても、落ち着かなかった。

コトブキ堂の現在の入店証は、ネックストラップがついている。

昔はきっとなかっただろうから、プラケースで、後ろにピンがついているタイプのものだろう。

コトブキ堂へ向かうと、そのまま二階の事務室へ向かった。
総務の女性社員へ声をかける。

「あら、北野森さん。今日はお休みでは?」
「実は、昔、父がこちらで働いていたことがあるんです。集合写真があるからって言われて」
「あらー、そうなんですか」

「社員のアルバムとかってありますか?」
「ええ。こちらでお待ちください」

何を探せばいいのか分からないままに、アルバムを開く。

20年前……。
その当時の店長と、社員、アルバイトが写っている。


この頃は小さな店だったらしく、15人程度が写っていた。
ユキの姿もあった。

入店証、というより、揃いのポロシャツに、名前が刺繍されている。
その中に、一人だけプラケースの入店証をしている人物がいた。

「……そんな……。あの人が……」