ベッドに座り、どこか遠くを見つめているその瞳は、とても切なそうだった。

「輝。大丈夫か?」

 俺の声が届くと、彼は視線を此方に向け微笑む。

その様子は昨日と変わらない。

相変わらず痛みや苦しみを我慢しているようだった。


「ありがとう」

 毎日ではない見舞いに、いつも彼は欠かさず感謝の言葉をくれる。

 俺がベッドの傍に置いてあった椅子に腰かけると、彼は少し微笑んだ。

「その椅子、さっきまで歩美が座ってた」

 完全に温もりの消えたこの椅子が、その言葉で急に愛しくなる。

それに気付いたのか、彼は俺の方を見て笑っていた。

「やっぱ好きなんだ!」

「あんな女ありえねーよ!」


 こんなことで無邪気に笑う輝の裏に潜む、彼を犯しているものが憎い。

その気持ちはきっとあいつも同じで、彼も同じだろう。