若葉香りたつ、初夏の訪れ。

 窓を開けて空を仰ぎ、大きく深呼吸をした。


「おはよう。輝」

 ただ真っ白で四角い空間に、寂しく置かれた大きなベッド。

そこに寝転ぶ彼に、小鳥の囀ずりのような声で朝の訪れを伝える。

 布団から覗く青白い顔、目元のクマが、昨夜もあまり眠れなかったことを言わずとも語り出していた。

それでも、彼の笑顔は今日も明るく優しい。


「俺も空見たいなー」

 柔らかな笑顔とは対照的な、沢山の管に繋がれた痛々しい体。

その管が彼の命を繋いでいるのかと思うと、外れるのが怖くて私は安易に動かせない。


 カシャッ。

本物のカメラでもあまり出さないありきたりな効果音と同時に、携帯の画面に写し出された空。

「これで我慢してね」


 雲もない空は写真に撮ると、ただ水で薄めた絵の具の青のようだった。