ringringring……

煩いくらいに電話の音が鳴る。
出たくない。
あたしは頭まで布団をかぶった。


彼と別れて2週間。
薄くなってゆく愛情にしがみ付いていられる程
あたしは固執していなかった。
薄情者でと自分でも思う。
狭いアパートの部屋で、よく未来について話したりした。
あたしは仕事を終えると早足で部屋に帰って
鼻歌混じりでご飯を作ってた。
彼も早足で帰ってきた。
いつからだろう。
その足音が段々と遅くなってきた。
ドアを開けた時の笑顔もない。
機械的に作るご飯。
減ってゆく会話。
出て行ったのは彼の方。
話しを切り出したのはあたし。

「もう、あんたの隣で笑えないよ」

涙は出なかった。
彼は新しい部屋をー探し
彼の物が一つ、また一つと減っていってた。
そして最後に彼がいなくなった。
淋しくもない。
只、ベッドが広く思った。
いつも一緒に寝てたベッド。
今はあたし一人。
それが特別でも何でもないのに、とても不思議な感じがした。

ringringring……
ringringring……

電話が鳴る。
出たくない。
きっと期待してしまうから。
もう、彼の声は聞けない。