そうこうしていると訪れた、土曜日。


 あたしは、待ち合わせより十分ほど早い時間に、氷室君の家最寄り駅へ到着した。


 右斜め上を見れば、看板に書いてある、「栗ヶ丘駅北口」。


 あたしの柿原橋から、四駅のところにある。


 今日の待ち合わせ時間は、午前十時。……ぼうと考え事をしている間に、残り六分まで、迫ってきている。


 服は、あーちゃんのアドバイスをもらいつつ、あたしなりに一生懸命選んできたもの。


 今日の一番の問題は、そう。貯金の懸かった、言葉。


 直ぐに帰れと言われるか言われないか。ここである。


 ただ一つ言っておきたいのが、そう言われたとしても、今日のあたしは引かない。


 絶対外に連れ出して、念願の初デート。叶えてみせる。


 決意に燃えるあたしの周りには、完全に、妙なオーラが漂っていた。


 その証拠とも言えよう、周囲を歩いていた人が、ものの三秒で、二メートル以上遠ざかってしまった。


 しかし、当のあたしは、そんなことを気になんてしていない。