今年の夏も、やっぱりとんでもなかった。


「なーんで、こいつらも一緒なわけ。」


祭り太鼓の響く音。
子供たちのはしゃぐ声。
色とりどりの提灯が、よりこの雰囲気を彩っている。

そう、今は夏祭り。

地元だけで行われる小さな祭りだが、
結構な人で賑わっていた。


そして、やはり俺――宮塚仁と、
最凶幼馴染、光原永遠子は
案の定、今年も一緒に祭りへ来ている。


「「仁兄ちゃん!!」」


しかし、今年は少し特別。
俺と永遠子、そしてお互いの弟と妹まで一緒だ。


俺の妹と、永遠子の弟は
自分たちの兄や姉と違ってとても仲が良く
今も色違いの浴衣を着てキャッキャとはしゃいでいる。


「りんご飴買ってー大きいやつー」
「わたあめ買ってー大きいやつー」
「無理だなーごめんなー。」
「「買ってよ!!!」」


さっきからずっとこんなやり取りが続き、
俺の財布も既に危うい。

あぁ、何でコイツらも一緒なんだよ!!


「あっはっはー!ザマーミロッ!」
「何で笑ってるんですかー永遠子さんー。」
「あたしにもわたあめ!」


俺のそんな姿を見て笑ってばかりの永遠子は、
今日は紫の蝶の浴衣を着ていて、
いつもとは違う。

……いつもより、綺麗だ。


「何。どこに見惚れてんのよ馬鹿!」
「み…見惚れてなんか…!」
「胸は無いですけどー浴衣は似合うでしょ?」
「うん。」
「でしょー…って、ムカつく!!」


結局りんご飴もわたあめも買って、
それを頬張る3人を、うんざりと俺は見つめる。
でも、楽しそうな彼女を見ると
自然と俺も顔が綻んだ。


(今日だけだぞ……)


「あーっ!金魚すくいだー!」
「ねっ、永遠子姉ちゃんやろーっ」
「お、いいねー!」


金魚すくいの屋台を発見し、
人混みの中を一目散に駆けて行ってしまうチビ二人。
その様子に笑って、永遠子も後をついて行ってしまった。


「おい…っ、待てって!!」