「沢村若菜です。」


ウソだろ……。

俺は思わず笑みをこぼした。

沢村若菜が今、目の前にいる。

この研究室に配属になったらしい。

もう観察できなくなるかと思ったけど、これからはすぐ近くで観察できるのか!

向こうから来てくれるとは。


「じゃあ、沢村さんは窓側の席で、波多江くんはそこの真ん中の席。でいいですよね?川崎さん?」


何言ってんだよ。

窓際のサボリ席は俺の席だろ!

南さんの身勝手さに若干イラッとして、適当に答える。


「俺に訊くより、シゲに訊いた方がいいんじゃね?シゲが挟まれることになるんだし。」


どうせシゲのことだから、いいですよ、とか言うんだろうけど。


「僕は構いませんよ。」


ほらね。

で、俺はどこに行けばいいんだよ?


「川崎さんは、私の隣が空いてるんで。」


お前の隣かよ。

仕方なく俺は自分の荷物を持って南さんの隣の席に移動した。