ルイの夫となったこの男、亮介はとても優しい男でルイの高校の時の同級生だ。

きっと彼だけが、その昔、美しいアゲハチョウの幼虫の存在に気づいていたに違いない。

それは『美しい容姿』という意味のアゲハチョウだけではなく、無垢なルイの『人としての美しさ』にはっきりと惹かれていたのだろう。

亮介はルイを

『心の底から愛している、誰よりも、誰よりも愛してる』、

というだけの男で、特別金持ちでもない。

元カリスマモデルが嫁いだ先としては、不釣合いなほど、実家の小さな町工場を継いだだけのごく普通の男であった。

しかしルイも『この男に一生ついていく』覚悟と、そして『この男の子どもを生みたい』という、くったくのない愛情に満ち溢れていた。

二人のそこには、とても軽やかで幸せな時間が大河のように悠々と流れていた。