私はどこかホッとしている。


ジュードにカラダを許した
ことで・・二人だけの夜が
怖くも思えていた。

支配的なセックス・・
何度も目を開けた。
だけど彼は坂巻ではない。

登り詰めそうになると
私は意識的に
彼から逃れようとしてた。


"イッテハダメ"


せめて気持ちだけは
あの人を想っていたかった。

なのに同情の、
互いの性欲を満たすだけの
行為であんなにも感じ、
何度もイかされて。

朝、目覚めた私が見たものは。

シーツの上の・・
繋がれた手と手。

白くて、指の長い手に
似合わないタコがあった。

暫くジュードの綺麗な寝顔と
重ねて眺めていた。

手をそっと解こうとすると
無意識か自分の唇の方へ
引き寄せるのだ。

何故、ドキッとしたのか。

彼とて違う女を
想ってるかもしれない。

目に少し掛かる彼の髪を・・
払おうとした手を
引っ込めていた。

バカにもほどがある。

そこにある筈のないものを
見ようとするなんて。

此処に居るのはただの
"満足した男と女"
その残像である。


「シーちゃん、
噴いてるよぉっ。」

「え・・、あっ。」


鍋から溢れ出す
鯖節入りのお湯。
後ろから火を止めてくれた
のは那須さんだった。

ボーッとそんな事を考え
ながらキッチンに立っていた。
おダシの事なんか
すっかり忘れて。


「ごめんなさい、
直ぐ作りますから」



聞けばご飯を
食べていないらしいので、
うどんでも
作ってあげようとしてた。



「具がネギと
卵しかないけど・・。」



出来上がった
月見うどんを運んで行くと
目をキラキラさせ、
肩まであるロンゲを
持っていたゴムで纏めてる。

この人は麺類が好きなんだ。
先におダシから
ズズッと飲んでいた。



「うんめぇー・・! 俺さ、
大阪に住んでた事あんのよ。
だからこう云う味、
もー大好き!」

「おかわりありますよ」



私は・・
とても無邪気なこの人に
感謝しなくてはいけない。