バク バク バク…-―






何度も瞬きを繰り返すあたしの額に、じわりと汗が浮かぶ。






妙な緊張感に包まれたあたしとは違って、教室の真ん中辺りでは、まるでアイドルの出待ちをしてるかのような期待の目をした女子が集まっていた。






「間近で見たら、あたし失神するかも」



「大丈夫。失神する時は皆でするから」







わけのわからない連帯感を確認し合う彼女達。






その反面、それを遠巻きに見てる男子はいかにも不服そうな表情をしているのに気づいた。






“ただでさえ男が多いこの学校に男の教師だぁ?これ以上いらねぇよ!”って雰囲気。






「あんな若僧にこのクラスの担任なんか出来んのかよ……!
俺達こう見えて受験生なんだぜ」






後ろの席に座るあたしの耳に、このクラスでムードメーカー的存在のヒロキのぼやく声が聞こえた。






普段は明るいキャラで通ってるヒロキの冷ややかな声。
振り返ると、待ち人を待つドアを苦々しげに睨んでいる。






ブルに対してしかこんな攻撃的な顔はしないと思ってたのに……






なんだか、初っ端から波乱の予感がするのは、あたしの気のせい?







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