悠美ら四人は、いったん佐々木の家へと足を運んでいた。


お香の臭いが立ち込める一軒家には、佐々木以外はだれも住んでいないようだ。

佐々木は、壇が祭られた大きな部屋に入ると、その壇の下にある引き出しから、呪具や祭器をとりだしていた。


だれも一言も発しない静かな部屋に、金具がふれあう小さな音だけが響いている。

ふと、長い呪針を左手にそろえていた佐々木の手が止まった。

「また、誰かが犠牲になっている」

その言葉に、悠美はとっさに目を左右に配る。

「ここは大丈夫だ。強力な禁に守られているからね」

そう言われて、悠美は緊張した肩を落とした。たしかに何の変化も見られない。


また静寂が戻った。


次に静けさを破ったのは、琢己の携帯だ。

「こんな時に……」

と、後ろのポケットに手を回した琢己だったが、その手をいったん止めた。


(この着信音は)


と同時に、悠美の顔をのぞき見た。

「悠美、お前の携帯は?」

「それが、昨日の夜落とした」

「じゃあ──」

琢己はポケットの携帯を取り出すと、フリップを開いた。


『悠美』


と、そのディスプレイには表示されている。

「誰か拾ったのか?」

着信履歴からこの番号を選んだのだろうか、という疑問すら琢己には思いつかなかった。