「いらっしゃーい!
千夏ちゃんのヘアメイク担当のナッキーよ。
よろしくね~」

メイクルームに入っていくと二十代半ば位の人懐っこい感じのお姉さんが出迎えてくれた。

長めのさらさらボブがよく似合ってる素敵な人だった。


私はナッキーさんに促されて鏡の前に座り、

後ろに立つナッキーさんに鏡越しに会釈しながら聞いた。


「よろしくお願いします。
あの、ナッキーさんって本名は……?」


ナッキーさんは私の髪をふわっと持ち上げながら笑った。

「ああ、いいのよ、みんなナッキーって呼ぶんだから。
千夏ちゃんもそう呼んで。
それより、千夏ちゃん、普段あんまりお化粧しないでしょ?」

顔を覗き込まれ、叱られるのかと身を縮めた。

私はふだん薬用リップくらいしか使わない。

「あ、はい……。
ちゃんとファンデーションとか塗った方がいいですか?」