愛おしいヒトの為ならば、弱虫な自分と決別して強くなれる…。



愛おしいヒトの為ならば、恐怖からも逃げナイ自分になれる…。



ただ一筋の願いをこめて、ひた走る恐怖と不安に耐えていた・・・




アノ日と同じ席の位置関係で、革張りソファに身を置く私たち。



彼の巣窟である此処は、私たちにとって完璧なるアウェイだからこそ。



ただひらすらに息苦しくて、向けられる眼光の鋭さに縮こまりそうだ…。




「当てつけとは、どういう意味でしょうか?

爽やかさをウリにした、後藤さんらしくもない…」


「・・・っ」


記憶を失った拓海がサラリと返す言葉に、内心ヒヤヒヤとしている私。




表裏の面を持つ後藤社長に“爽やか”とは、そぐわないフレーズと思いつつ…――




「ハッ、ただのイヤミだな!

そうだろ、“妾(めかけ)秘書”さん?」


「っ、そんな――!」


考えを読み取られた挙句、失礼な呼び掛けに反論しようと立ち上がったのだけれど。




「今さら2人して、ノコノコとよくやって来れたものだ。

堕ちるところまで堕ちたか…?」


「ッ――!」


簡単に反撃を封じてしまうほどの冷たい声色が、私の身体を震え上がらせて。



吐き捨てるような屈辱的な言葉と蔑む視線にも、ただ怯んでしまうの…。