小屋の陰に隠れたまま、レイは腰のブットパックに手を伸ばす。

中から取り出したのは、液晶モニターのついた小型無線機だった。

「こちらエージェント、レイ。ケリガン、聞こえるか?」

レイはどこかに無線を送る。

間髪入れずにモニターに映し出されたのは、無表情の、しかし知的な顔立ちの若い女性だった。

彼女がケリガンらしい。

「感度良好。聞こえます、レイ」

「現在例の島で任務遂行中だが…厄介な事態になった」

言葉の割には冷静な表情のまま、レイは言う。

「機関より持ち出された人体改造用ナノマシンで島の地下水が汚染されている。島民10万人近くが、既に暴徒化した状況だ。同時に大統領令嬢アシュリー・マクダウェルも島で保護している。至急何らかの対策を講じてもらいたい」