「ほんとに、結菜ちゃん可愛かったね。
僕、惚れちゃったよ。」

クスクス笑いながら、雅人がそんなことを言う。
何だか気に入らなくて、俺はポツリと呟いた。

「この、ロリコン」

「あはは! もー、雄二は相変わらず酷いね。
僕がロリコンなら、君も、でしょ?」

何を言ってるんだコイツは。と思い、横を向くと余裕の笑みで運転をしている雅人。

いらいらする。

「何で。」

俺がいつもよりワントーン低めに声を出すと、ついには雅人が吹き出した。

「あー、おかし。
雄二も、思い出したでしょ?

―――あの人の、こと。」

「っ!」

脳の片隅に、アイツがあらわれる。
確かに、煙草をクシャリと曲げられた時はアイツを思い出して、結菜とアイツの顔が重なった。

だけど、雅人に指摘されると無償にイライラする。


煙草を吸おうかとポケットに触れたが、いつもの感触がない。


『とっ、ともかく!
私の前では全面禁煙ですーっ!!!』

『お前が持っていれば、俺が吸う心配もねーだろ。
ただし、テメーとさよならするときは返せよ?』

ああ、アレかと思い出す。
結局あのまま忘れて帰ってきちまったんだなと後悔した。