『ぃぃぃやぁぁぁぁあ!!』


今にも倒れそうな、5階建てのオンボロアパート。下手するとトイレの水は出っぱなし、白い壁にはでっかい亀裂。そんな私の城に響き渡る、まごうことなき私の絶叫。


「シオ、シオ!お願いっ!」


私は包丁を流しに投げ捨てて、居間に寝転んでマンガを読んでいたシオにすがった。



シオは子猫みたいな真ん丸の目を私に向けて、笑う。
柳の木が風に揺れるみたいに、しなやかにゆっくりと、上体を起こすシオ。


「ナチ、そこで待っててね」


シオはキッチンへ向かった。

私がついさっきまでお昼ご飯を作っていた、そのキッチンに。

普段は男子禁制の女の城も。

非常事態なら話は別。