「藤ケ谷センパイ!
廊下で見かけて一目惚れしました。
付き合ってください!!」


場所は告白の定番の裏庭。
時間はこれまた定番の放課後。

俺の前には、
緊張で身体を硬直させ
顔を真っ赤に染めた後輩の女の子。

肩まで伸ばした栗色の髪に
小動物系の大きな目を潤ませて
俺を見上げる彼女は
かなり可愛い部類に入ると思う。

現在特定の彼女もいないし
普通なら確実にOK。


でも――、


「――ごめん。
今バンドがスゲー忙しくて
付き合う時間とかとれないから
特定の彼女作る気ないんだ。
本当ごめんな」


半分本当で半分嘘。


「わかりました。
それじゃバンド頑張ってください。
私応援してますから!
……失礼します」


彼女の小さな後ろ姿を見送りながら
ポケットに手を突っ込んで
空中を睨み付ける。

さすがに泣き顔を見ると良心が痛む。