俺とカズマが音楽をやり始めたのは
中一の頃。

夏休みももうすぐ終わりに近づいたある夜
いつもの如く
俺の部屋にカズマが押し掛けて来て
くだらない事を話しながら
テレビの電源を入れた。

その時何気なく見た映像が
その後の俺たちの人生を変える。


そこで流れてたのは
その夏日本で行われたばかりの
ロックフェスの独占放送で、

超有名なアメリカのロックバンドが
その日のトリを飾る
パフォーマンスをしてた。


上半身裸で熱唱するボーカルに
まず眼が奪われた。

そして衝撃的だったのがその日の天候。

野外なのに台風。
その時まさに暴風雨のど真ん中。


星一つ見えない暗黒の空には
竜巻みたいな風が吹いてて

ライブ中の彼らの頭上では
多数のライトがグラグラ揺れ
いつ落ちて来てもおかしくない状況。

加えて横殴りの雨が
ステージをすぶ濡れにして
マイクや楽器やらの電気機器に
四方八方囲まれた彼らは
いつ感電してもおかしくないありさま。

――まさに生と死のはざま。


そんなありえねえ状況の中
彼らはまったく怯まず
むしろそれを楽しんでる様子で
1時間半のパフォーマンスを行った。


はじめは
「すげぇな」なんて言い合ってた俺等が
次第に無言になって
じっと画面に釘づけになってた。


心臓が熱くなって
脳みそが痺れた。


詳しい音楽の知識も
世間一般的なレベルしかないから

彼らの楽曲がどれぐらい優れてるかとか
演奏の技術がどれぐらい高いかとか
まるっきりわからなかったけど

ただ純粋に

何だこれ!?
カッコよすぎだろ!!

ってバンドってものに憧れた瞬間だった。