私は夜の海へと出ては堤防に腰を掛けて、景色を眺めた。 何してるんだろ…。 お金さえあれば何とかなるって考えが…甘かったのかな…。 住所すら書けないなんて…情けない。 記憶をなくしてからの五年間。 女将さんに頼りっきりだったから…。 だから…何も出来ないのかな。 世間知らずもいい所だよね…。 名前まで…記憶にないんだもん…。 どうして……記憶がなくなったの…? 付き合っていた彼が亡くなったから…?