桶に柄杓と水を入れ
片手には花を持ち
緩やかな斜面を登っていく。



君がいなくなってもう2年が経つんだよ。






「あっつ…」



ジリジリと照らしつける灼熱の太陽を睨みながら
あたしはぱたぱたと手で扇いだ。




「…ふー!」


坂を登りきると、辺りには陳列した多数のお墓。

その中の1つの前に歩み寄り、ゆっくりとしゃがみ込む。



「久しぶり。元気だった?」


少し枯れた花を瓶から取り出し
あたしは代わりに持ってきた、不釣り合いなひまわりの花を入れた。


「…陽向。そっちはどう?」


片手でひまわりをいじりながら、墓石にむかって声をかける。

返ってくるはずのない返事を
期待しながら…




「もうあれから2年だよ?早いよね〜!」


さっきの暑さがうそのように
蝉の鳴き声さえも、心地いい気がするのは気のせいなんかじゃないよね。


「..ごめんね。来るのが遅くなっちゃったね…ごめんね、陽向…」





君が消えて

それから2年もの月日が経って

やっとあたしは、ここに来ることを決意した。

ずっと受け入れられなかったんだ。
君の死を―…




「今日でちょうど2年。
2年前の今日、あんたはあたしを置いてった…」


思い出だけ残して、陽向は死んだんだ。






「ねぇ陽向。あたしは…向日葵は…、今日も太陽が恋しくて、空を見上げているんだよ。
あんたはあたしの太陽だった。
暗い闇を照らしてくれた光。

なのに……」


こぼれ落ちる涙が、地面に落ちては、消えていく。



「なんで死んじゃったんだよ…陽向ぁっ」



ひまわりは、いつだって太陽にこがれているんだ。
灼けつく日差しを受けながら
それでも太陽を見上げるの。


陽向は太陽だった。
あたしの、太陽だった。



君がいなくなってあたしの空に太陽はなくなった。
心に雨が降り続けているみたい

永遠に続く雨みたいだよ、陽向……





.