キラがうちに来た翌日、あたしはキラにもらったメモを片手に、電車で2時間以上かかる場所にある学園都市に来ていた。

ペンションの元管理人夫妻が経営する喫茶店は、いくつもの大学や様々な研究機関が集まるその都市の一角にあった。


この都市自体がまだ出来て日が浅いのだろう。

まっすぐに伸びる大通りには、統一感ある落ち着いた色合いの、だけど近代的な建物が建ち並んでいる。

でも、それらの建物はさほど高さがないから、空がとても広く感じられ、冬なのに青々と茂った街路樹の常緑が空の青によく映えている。

車道も、歩道も、建物も。
ひとつひとつが大きくゆったりした造りになっているから、町は開放感に包まれていた。


そして。

そんな通りの一番隅っこに、喫茶店「twin star」は存在していた。

白い壁に三角屋根。

平屋建ての建物をぐるっと取り囲んでいるのは、溢れんばかりの植物。

「準備中」の木製プレートがかかったドアを少し開けただけで、お店の中から真新しい木の香りが飛び出してきた。

……まるで、あのペンションに来たみたいだ。


あたしを迎えてくれたのは、旦那さん。

「美夕ちゃんいらっしゃい。待っていたよ」

そこには5年経っても全然変わらない、旦那さんの穏やかな笑顔があった。