その日の放課後、あたしは1人でバスを待っていた。

雨が降っているわけでもないのにひとりでバス停に立ってるなんて……なんだか変な気分だ。

遠くからバイクのエンジン音が聞こえてくると、思わずその音の方を向いてしまう。

だけどそれは、当然、先輩であるはずがなくて。

目の前を、大きなエンジン音とともに見たことのないバイクが通り過ぎるたびに、なんだか胸がぎゅっと締め付けられる気がした。


いつか、バイクの音を聞いても何も感じなくなる日が来るのかな……。



遠くから、バスが近づく音が聞こえてくる。

あれは……そう、ソラが乗っているバスだ。

そして、これからあたしをキラの元へと運ぶバスだ……。


あたしの脳裏には、ずっと、ペンションのキッチンで見たキラの姿が焼き付いたままだった。

自分の喉元に刃を向けて、あたしをじっと睨んでいるキラ──。

今日、キラが学校を休むと聞いたときにホッとしたのは事実だけれど、

でも、それ以上に、早くこの目でキラの無事を確かめたかった。


──あたしは罪悪感や感傷に浸っていられる立場じゃない。

自分で選んだ道なんだから、前に進まないと……。


あたしは大きく右手を挙げて、バスを停めた。