こうして、あたしたちは再びペンションへの道を引き返し始めた。

山道は暗かったけれど、月明りをたよりにできるだけ石や突起物の少ない場所を選びながら。

あたしたちは、手をつないで、ゆっくりと歩いた。



「なんだか、雨の日を思いださない?」

口を開いたのは、ソラだった。

「うん……懐かしいね」

ちょうど、私も同じことを考えていた。

雨の日っていうのは、バスで偶然ソラと会って、そのまま終点まで行ってしまった、あの日のことだ……。

「だけど、もう随分前のことみたい」

あれから、いろんなことがありすぎて──

あたしが笑うと、

「これからはいくらでも2人で歩けるよ」

ソラはあたしの手を強く握った。




そして、少しの沈黙の後、ソラはこう言った。


「──キラは、夜が怖いんだ」



「え?」

あたしは思わずそう聞き返した。

あのキラが、夜が怖いって……?